人間の存在を揺るがすロボット産業
「文明の五大危機」の話のポイントに入る前に、「文明の5大危機」は文明の構造と経済的な観点をあわせて、植物の成長段階で表しています。根っこから茎、葉っぱ、花、実、種。そして種が土のスキマに入る。この七段階のサイクルで整理したものです。根っこは「観点・基準点」というキーワードで整理しています。茎が価値観、多様な思想、哲学、理念。葉っぱが人間集団を組織化していくシステム。花は組織化された人間集団、経済的な観点では企業が一番象徴的ですが、その企業による商品生産の開発技術、そして実は、その商品を市場に流通、販売させるマーケティング、ブランディング。種は、そこからその商品がどのくらいのマーケットシェアを取れるのか、市場占有率。そしてスキマは、その商品を購入して物質的な富の豊かさを得る段階です。
このように整理した中で、私たち日本人がこの中で一番強いのは花の部分の商品生産の技術です。メイド・イン・ジャパンのプライドが、戦後の日本のプライドそのものでもあります。戦後の廃墟の中からモノ作りの精神で世界ナンバーワンの経済大国に上り詰めたその原動力は、この花の部分の力なのです。
しかし問題は、このメイド・イン・ジャパンの力そのものが現在、非常に深刻な危機的な状況に落ち入っているということです。今の日本は経済の成長戦略がなく、国家の予算がどんどん膨らんでいる状態です。収入がないのに支出ばかりが増えている。日本全体を元気にさせることができる産業、新しい経済成長戦略を創っていかなければいけません。
その中で新しい技術革新によって未来産業の希望となるのかどうか期待されているのが、ロボット産業です。ロボットは日常生活の中でまだあまり馴染みがないかもしれませんが、現在物凄い勢いで発展を遂げています。看護ロボットから清掃ロボット、警備ロボットなどが各企業で作られ実用化され始めていますし、米国防総省の戦略判断にロボットが携わったり、はては物理法則を自力で発見する人工知能まで開発されています。そのようにロボット技術が発達していくと一面便利にはなりますが、実は人間存在にとって大きな問題を内包しています。
ロボット産業は10年、20年先を見据えての発展産業と思われるかもしれませんが、時が経てば経つほど、機械が人間の能力や性能、労働効率を上回るようになっていきます。人間が学び記憶するより遥かに莫大な情報量を持ち、人間が考えるよりも正確な判断をすることができるロボット技術が既に生まれている事実もあります。
そうなると、人間が働く意味、人間の生きがいそのものが機械に取って代わられるという危険が生じるでしょう。つまり、ロボットの発展が、人間の存在価値や存在意味そのものに疑問を投げかける危機的な状況が生まれつつあるということです。もちろん人間のほうが役に立つという方もいらっしゃるかもしれませんが、労働効率上、ロボットは文句なんて言いませんし、「残業代出せ」とも言いません。うつにもなりませんし、「あの人嫌い」とも言いません。ロボットよりも人間の思考や判断、労働力の方が優れている、という根拠が失われれば、合理的判断としては、ロボットでできる仕事はロボットの方がよいでしょう。
つまり、日本の強みであったメイド・イン・ジャパンが今、中国を初めとする新興国に追い立てられて非常に危機的な状況にあります。そしてそれを超える最先端の技術であるロボット産業が、進むこと自体はいいことなんですが、人間の雇用・人間の存在意義に対して、強烈な象徴的な問題提起をしているのです。
「人間の存在価値とは何なのか」「人間にしかできないことは一体何なのか」、そこを私たちは深く明確に考えなければいけない時を迎えています。この、構造的、本質的文明の危機をどのように解決していくのか。私たちはこの時代の危機を解決するためには、今までのやり方ではなくて、一番深い土台のところから全体を改めて立て直していく必要があると考えています。





